「不安になりきる」の注意点
森田療法では「不安になりきる」という言い方があります。
自分の感情をそのまま見つめることができたとき、不安・恐怖がいつのまにか流れてなくなる、というのです。感情をそのまま見つめること、それが「不安になりきる」「恐怖になりきる」ということなのです。
この教えについて、わたしが思ったのは、不安・恐怖を見つめる、というのは、あくまで「感情」を見つめるのであって、不安・恐怖についての「考え」や「記憶」を見つめてしまうと、逆効果になるかもしれない、ということです。
不安や恐怖についての考えや記憶を見つめてしまうと「あのときああすればよかった」とか「わたしはなんでこうかんがえるのだろう」といったように、ほかの考えや記憶が頭に出てきます。思考は言葉でできています。思考を追いかけても、次々と思考が出てくるばかりです。
思考や記憶を追いかけるのではなく、感情をそのまま感じる、ということが大切なのではないでしょうか。言葉ではないものを感じるということです。不安な感じをそのまま感じてみましょう。その不安についてなにも判断せず、評価せず、比べないで、ただ感じだけを感じます。
感情、思考、記憶を分けるのが難しい、という人は、その感情が作り出す身体の感覚を感じてみるのもいいと思います。不安からくるお腹の重たい感じ、恐怖でのどの奥がつまる感じ、頭がびりびりする感じ、など、いろんな感覚があると思います。
それらは感覚なので思考とは別にして感じやすいのではないでしょうか。その身体の感覚を、自分の不安や恐怖そのものとして感じてみましょう。消そうとせずに、ただ感じるだけ。それを感じきることができたら、不安・恐怖は知らず知らずのあいだに和らいでいるかもしれません。
不安・恐怖は、悪いものではありません。ただ自然に存在しているだけのものです。良い、悪い、という見方からいったん離れて、ただ、そこにある感情を見てみましょう。
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